レインガーデンってなに?
近年、都市化が進むにつれて、私たちの住む環境は多くの課題に直面しています。
特に、アスファルトやコンクリートで大部分を覆われている都市部は、雨水の自然な浸透を阻害し、洪水のリスクを高めています。
ここで重要な役割を果たすのがグリーンインフラです。
グリーンインフラは、自然環境がもっている機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方で、洪水の管理や、空気の質の向上、ヒートアイランドの緩和など、多くの利益を提供し、私たちの住環境の持続可能性を高める機能があります。
このグリーンインフラには、公園、緑地帯、屋上緑化、ビオトープ、湿地など様々ありますが、僕がこれから作っていきたいグリーンインフラに『レインガーデン』というものがあります。
まだ一般的ではないので、レインガーデンを初めて聞く方も多いかもしれません。
レインガーデンという言葉から、どんなことをイメージしましたか?
- とりあえずガーデンってつくから庭の種類の1つなのでは?
- 池のある庭のこと?
- いつもジメジメしてる庭?
もしかするとこんな印象を持たれたかもしれませんね。
レインガーデンとは、ごく簡単にいうと、『降ってきた雨水を一時的に溜めてゆっくり地面に浸透させることができる植栽スペース』のことです。

私たちは、電気を使ったり自動車に乗ったりといった日常生活を送る中で、どうしても環境を汚染する化学物質を排出してしまいます。
これらの化学物質はアスファルトやコンクリート、屋根に蓄積され、雨が降ると水と共に池、川、海に流れ出し、生物多様性の損失を引き起こす原因の1つとなっています。
レインガーデンは、一般的な庭と同じように植物を育て楽しむことができるのはもちろんですが、化学物質を含みながら流れる雨水を集めて、さらに植物の力で吸着、分解することができるため、生物多様性に貢献することができます。
さらに、集めた雨水を地面にゆっくり浸透させることで、近年増加している豪雨による洪水リスクの軽減にも役立つことから、気候変動への適応策としても機能します。
また、もちろん一般的な庭としてガーデニングを楽しむこともでき、幼稚園や小学校などに設置すれば環境教育の場としても機能します。
このように多機能を兼ね備えるレインガーデンは、私たちの生活の質を高めながら動植物や水資源を守る、地域と環境に優しい持続可能な庭として位置づけられています。
実際に、日本の環境省や米国の環境保護庁(EPA)など各国の様々な機関が、レインガーデンを効果的な雨水管理の方法として推奨しています。
レインガーデンのさらに詳しい内容については別の機会に触れたいと思いますが、庭を通してランドスケープや環境保全に関わりたいと考えてきた僕にとって、このように多機能なレインガーデンはとても意義のあるものだと思っています。
- これから生き物に優しい庭づくりをしたいと思っている方
- 庭をローメンテナンスなものにリノベーションしたいという方
- 環境に良いことをしたいけれど何をしたら良いのか迷っている方
- 会社の敷地の一部を利用して地域や環境に貢献したいと考えている方
にとっても魅力的なものになると思うので、引き続きこのブログを見てもらえると嬉しいです。
レインガーデンに興味を持った理由
そもそも、どうして僕がランドスケープや環境保全、そしてレインガーデンに興味を持ったのか、少し紹介させてください。
故郷の喪失
原点になっているのは、僕が10代の頃に、祖父母が一生をかけて育ててきた畑が開発(区画整理事業)によって、あっけなくアスファルトで埋められた経験です。
戦後直後に祖父母が開拓民として荒地を耕してきた苦労を知っていただけに、とてもやるせない気持ちになったことを覚えています。

また、この地域はもともと地形の起伏に富んでいたことや、さまざまな形をした道がたくさんあり、子供の頃の僕は、ただ歩いたり自転車で走ったりするだけでもとても楽しさを感じていました。
そうした景色の複雑さや多様さが開発によって平らに均されて均質化していくことも、当時の僕には衝撃的なことでした。
写真をスライドして見比べていただくと、年代を重ねるごとに道路が整備されて建物が増えていく一方で、自然環境が減っていることが分かると思います。
開発の結果、この地域は土地の効率的な利用がされることでとてもキレイで便利になりましたが、僕にとっては生き物の気配があまり感じられなくなった静かな場所となり、歩いたり自転車で走ったりといった魅力は無くなってしまいました。
ランドスケープへの関心
愛着のあった故郷を失ったことから都市計画に興味をもち、大学では、土木や建築を学びました。
研究も兼ねて国内外のさまざまな集落を巡るなかで、地形や気候に寄り添い、人と自然が織りなしてできあがった「ひとまとまり」の姿がとても好きになりました。
また、西澤文隆さんの日本の伝統的な建築と庭を実測するなかで見出した「庭と呼ばれない庭」という空間の捉え方や、岸由二さんの生物多様性の保全や気候変動による災害に対して流域単位でアプローチする「流域思考」、石川幹子さんの緑地を都市の社会的共通資本として考えることの重要性などを学びながら、徐々にランドスケープという分野についての関心が強くなっていきました。

卒業後は、とにかく植物にたくさん触れたかったので造園・園芸業の会社で、個人邸の庭や公共の花壇をはじめ、商業施設の屋上緑化や屋内装飾、公園の観賞温室、ビルの壁面緑化など、さまざまな現場で多種多様な植物を扱う経験をさせてもらいました。
一方で、現場によっては植物が短いサイクルで大量に消費、廃棄されていくことを目の当たりにしたことで違和感を覚えたり、ランドスケープ的な視点を活かせないことに物足りなさを感じたりするようにもなりました。
その後、有機農家で働きながら農作物の栽培や地域の循環、土壌について学び、環境学習施設でインタープリターとして里山管理や動植物調査、環境教育などに関わってきました。
特に、環境学習施設で関わらせていただいた生き物のための森づくりは、たとえば「木の枝を1本切るにしても、どの生き物のためにどのように残すのか」や「池底の落ち葉掃除をするときに、なぜ落ち葉を池の周りに数日置いておく必要があるのか」など、自然に対して手を入れる際に、生き物目線で環境を観察することの大切さを学びました。
そして、多くの生き物の気配が伝わってくる場所や、それに気づくことのできる知識や感性を大切にしていきたいと強く思うようになるとともに、そのような環境を保全、再生するような活動をしていきたいと考えるようになりました。

一緒にレインガーデンを作りませんか?
少し長くなりましたが、僕はこのような経験を経て、ランドスケープや環境保全に興味を持ちました。
そして、そのような視点から庭をつくっていくことで、私たちの快適な暮らしと生き物に優しい環境づくりを両立した取り組みとしてレインガーデンを作っていきたいと考えています。
今回、ご紹介したレインガーデンについて、どのように感じましたか?
レインガーデンは、個人的な庭としてだけでなく、地域や環境への貢献にもなる魅力的なグリーンインフラの1つですが、その効果を存分に発揮していくためには、たとえ小さな規模でもレインガーデンを作ってみようと思う仲間が増えていくことが大切だと思っています。
ですが、冒頭にもお話しした通り、レインガーデンはまだ一般的ではないので、次回からはレインガーデンのより詳しい内容や、具体的な作り方などについて触れていきたいと思います。
もしこの記事を通して少しでも興味を持っていただけていたら、引き続きレインガーデンについて一緒に学んでいただけると嬉しいです。