流域の人文誌

水は、誰のものでしょうか。

あなたの家の屋根に降った雨は、側溝へ落ち、川になり、海へ出ていきます。区画で囲い取ったはずの土地を、おかまいなしに通り抜けていきます。

では、私たちは、いったいどの流域に属しているのでしょうか。

私たちはふだん、自分の場所を住所で言いあらわします。何県の、何市の、何丁目。それは人間が地図の上に引いた、区画の線です。けれど、その同じ場所を、まったく別のやり方で言いあらわす方法があります。屋根に降った雨が、どこへ流れていくか、で。水の集まる範囲を、流域と呼びます。

「庭の人文誌」が、世界から一区画を囲い取る庭の物語だったとすれば、こちらは、その囲いをほどく物語です。囲う主が人から大地へ、所有から帰属へと、矢印が静かにひっくり返っていきます。この問いひとつから始まった、水をめぐる読み物の蔵書です。



水の文明史から、川と信仰の物語、近代の治水がこぼしてきたもの、そして、いま芽吹きはじめた「流域に帰る」暮らしまで書きためています。

順番に読む必要はありません。気が向いたときに、どの棚からでも、開いてみてください。

迷ったら、三つの入口からどうぞ。

蔵書の地図(全8部・35章)

第I部 流域とは何か ── 水で土地を見る

第II部 水の文明史 ── 灌漑から治水へ

第III部 川と、信仰と神話 ── 聖なる川、洪水の物語

第IV部 日本の水と暮らし ── 流域に生きる

第V部 近代治水とその影 ── 堤防と分断

第VI部 流域思考の誕生

第VII部 自然を活かす防災 ── グリーンインフラとEco-DRR

第VIII部 流域に、帰る ── これからの水と暮らし