小さな自然、豊かな学び:レインガーデンで始める環境教育

レインガーデンが生み出す学びとは

雨水が都市から失われる理由

雨が降ると、都市の道路や建物に落ちた雨水はすぐに排水溝へと流れ込みます。都市が発展し、人口が増えるにつれて、道路や建物の周りに雨水がとどまると交通が乱れたり、浸水が発生したりと生活に支障をきたすため、迅速な排水が求められるようになりました。

その結果、多くの都市では、雨水が素早く流れる仕組みが整備されています。

しかし、本来、雨水は土に吸収されて地下水となり、植物を育て、水蒸気となって空に戻るという自然な「水の循環」を繰り返しますが、反対にアスファルトやコンクリートで覆われた都市環境では、雨水が地面にゆっくりと染み込む時間が失われています。

この循環が失われることで、都市にはさまざまな問題が発生しています。

たとえば、雨水が地中に浸透しないために地下水が涵養(かんよう)されず、地盤が乾燥し、緑が衰退しやすくなります。また、地面が熱を吸収しやすくなり、都市の温度が上昇するヒートアイランド現象が引き起こされる要因になっていると考えられています。加えて、集中豪雨によって急速に流れる雨水が洪水のリスクを高め、都市インフラに大きな負担を与えることも増えています。

レインガーデンで自然の力を取り戻す

このような都市の問題を解決する手段の1つとして注目されているのが「レインガーデン」です。

レインガーデンは、屋根や地面に降る雨水を受け止め、植物と土がゆっくりと地面に戻すための植栽スペースです。

この過程で、植物や土中の微生物が雨水中の不純物を浄化し、地面に吸収されない雨水が多い都市環境にきれいな水を再び地下に戻すことで、都市の排水システムと自然の水循環を結びつける役割を果たします。

こうした働きによって、レインガーデンは環境に優しい都市づくりに貢献することができると考えられています。

また、レインガーデンは「学びの場」としても活用でき、特に子どもたちがここで自然の力とその重要性を実感する場にもなります。

レインガーデンが育む「自然の学び」

レインガーデンは、周りの地面よりも少し低くなるように作られるため、雨水が自然と集まります。そのため、以下のようなプロセスを目にすることができます。

  • 雨どいから流れ出た水がレインガーデンに集まる様子
  • 水がたまり、ゆっくりと土に染み込んでいく過程
  • 土の表面が湿り、徐々に深い層まで水が浸透していく変化

こうした雨水の動きにより、子供たちは雨がどのように地面に吸収されていくのか、そして、都市の舗装された地面と自然の地面の違いについても学ぶことができます。

また、土が水をスポンジのように吸い込む様子や、雨水が土の中でどのように流れていくのかを想像し、都市のインフラがどのように作られているかについて学ぶきっかけにもなります。

さらに、レインガーデンの植物に集まるチョウやミツバチ、土の中にいるミミズといった生き物を観察することで、生命が水や植物を介してつながり合っていることを学ぶことができます。

植物が根から水を吸い上げて、空気中に戻すプロセスなど、小さな自然の循環を伝える場としても効果的です。

家族や地域で育てる「小さな自然」

レインガーデンは、家庭や地域でも取り入れやすく、「ミニ・レインガーデン」としてプランターで導入することもできます。子どもたちと一緒に水やりや成長の観察をすることで、植物が育つ喜びを共有したり、生き物を大切にする心を育むことができます。

また、レインガーデンを学校の授業に活用したり、地域の公園に設置してイベントで手入れをすることで、地域全体で自然を育む楽しさや大切さを感じる機会にもなります。

おわりに

雨水が土に染み込み、植物が育ち、そこに生き物が集まる。こうしたレインガーデンの風景を見守ることで、子どもたちは自然のつながりやその大切さを感じることができるかもしれません。

また、レインガーデンで始まる足元の小さな体験が、未来の地球を想像し、環境問題という大きな課題に対して「自分にできること」を考えるきっかけになるかもしれません。

大人である私たちも子どもたちと一緒にレインガーデンを育てることで、忘れていた自然の素晴らしさを、子どもたちの瑞々しい感性によって改めて発見できるかもしれません。

忘れていた自然の素晴らしさを、子どもたちの目を通して再発見できるかもしれません。持続可能な未来に向けて、まずは小さな一歩から。

身近なところにレインガーデンを取り入れる暮らしが、その一歩目になるかもしれません。

家庭や地域、そして教育現場にレインガーデンを取り入れ、学びの場として活用してみてはいかがでしょうか。